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狂犬病

4月から来年度の狂犬病予防接種が始まりますが、狂犬病ってご存知でしょうか?

ワンちゃんを飼っている方なら当然知っている病名だと思います.狂犬病が日本人に知れ渡っているのは、その病気自体よりワクチンを毎年接種する義務の方だと思いますが、じゃあ狂犬病ってどんな病気?って言われると意外と知らないことも多いと思います.

今回は、そんな狂犬病のお話です.

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まず狂犬病というのは漢字からして犬がかかる病気と思われがちですが、人、猫、キツネ、あらいぐま、スカンク、コウモリなども感染します.ですが人への感染源となるのは、99%犬と言われているため日本では狂犬病予防ワクチン接種を義務化しているわけです.しかし日本で人間が義務化されているワクチンは存在しません(1.

不思議な話ですが、これにはちゃんと理由があります.それは狂犬病の危険性です.

エボラ、炭疽、天然痘、マールブルグ出血熱、いずれもどこかで聞いたことあるような危険な感染症ですが、発症後致死率は高くても80%程度、一方狂犬病は発症した場合99.9999%死亡します.狂犬病によって毎年5万人近く亡くなられる方がいて、そのうち一人も助からないことがほとんどです.驚異的な回復力によって、まれに助かる方もおられますが、現時点では確立した治療法はなく、本人の回復力に頼るところが多くあります.ただし、感染後に血清を打つこと(暴露後接種)によって発症を迎えずに助かる方はかなりの方がおられます(2.

日本には1957年以降、狂犬病の国内感染例はおらず(海外で感染して日本で亡くなった方はいます)WHOに清浄国だと認められております.ですが、去年のヒアリしかり、完全に防疫することは不可能です.

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仮に、狂犬病が日本に入ったとしましょう.ほとんどの狂犬病未接種犬の方は、急いで狂犬病予防ワクチンを打とうとすると思います.もちろん人間も同じように狂犬病予防ワクチンを打とうと考えると思います.日本から狂犬病予防ワクチンが瞬時に枯渇してしまいます.ですが、狂犬病予防ワクチンをワンちゃんに打てていれば、そんなに慌てる必要もありません.狂犬病発生時、狂犬病感染を疑われて、診断されたワンちゃんは強制的に隔離され、最悪の場合ご家族の同意なしに、かなりきつい言葉ですが、問答無用に殺処分されます(3.


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獣医を国家資格たらしめる大きな要因のうちの一つは、狂犬病を第一線で予防できる職業であるからと勝手に思っています.日本に長い間入っていないからとか、友達は打っていないとか、獣医の利権の確立だとか、ネットにはいろいろ論じられていますが、それでも狂犬病予防は自分自身をひいては大事なペットを守るのに(大事なペットをひいては自分自身を守るのに)非常に重要なことだと思っています.

そんなわけで、今回は狂犬病予防ワクチンを接種するのは意味がしっかりあることですよと言ってきたのですが、日本は狂犬病清浄国ということもあり、非清浄国と比べると法律が緩和されています.ワクチンを打つことによってワンちゃんに大ダメージを与えてしまうことが予想されるとき狂犬病予防接種の猶予措置をとることができます.うちの子大丈夫?と心配な方は、病院の先生に遠慮なくお尋ねください(4.

今回は、狂犬病予防接種の重要さについてお話しましたが、症状などその他のことについては説明してません.厚生労働省がその辺のことを詳しくホームページで紹介していますので興味のある方はぜひ見てみてください(5.

長文、乱文、駄文失礼しました.

                          まりも動物病院 獣医師 神崎 智春

参考文献

1)東京都福祉保健局

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kansen/yobousesshu.html


2)厚生労働局検疫所FORTH海外で健康に過ごすために

http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name47.html


3)狂犬病予防法

http://www.houko.com/00/01/S25/247.HTM

第三章 狂犬病発生時の措置

(届出業務)

第八条 狂犬病にかかつた犬等若しくは狂犬病にかかつた疑いのある犬等又はこれらの犬等にかまれた犬等については、これを診断し、又はその死体を検案した獣医師は、厚生労働省令の定めるところにより、直ちに、その犬等の所在地を管轄する保健所長にその旨を届け出なければならない.ただし、獣医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬等の所有者がこれをしなければならない.

2 保健所長は、前項の届出があつたときは、政令の定めるところにより、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない.

3 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生労働大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない.

隔離義務)

第九条 前条第一項の犬等を診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬等を隔離しなければならない.ただし、人命に危険があつて緊急やむを得ないときは、殺すことを妨げない.

2 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができる.

4)狂犬病集合予防注射実施のためのガイドライン

注射不適当犬及び注射要注意犬

http://www.tvma.or.jp/activities/pdf/guideline.pdf#search=%27%E7%8B%82%E7%8A%AC%E7%97%85+%E7%8C%B6%E4%BA%88%E6%8E%AA%E7%BD%AE%27


5http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/


by marimovet | 2018-03-06 19:52 | Comments(0)